高齢者の誤嚥性肺炎

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兵薬界 No.550,2001年11月号
2001年 11月 01日
  誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌を含む唾液や食物残渣、逆流した胃内容物が気道内へ流入することにより引き起こされる肺炎である。誤嚥は嚥下障害と共に防御的に生じる咳反射も障害されるために起こる状態である。

  高齢者で脳血管障害や意識レベルの低下があれば、種々の程度に誤嚥が生じると判断すべきである。一方で、誤嚥の正確な診断は容易でなく、摂食時にむせても誤嚥していない場合や、むせなくても誤嚥している場合もある。特に、就寝中に認められる無症候性の誤嚥は誤嚥性肺炎の原因として重要だ。

  高齢者では無症候性の脳血管障害の頻度が高く、明らかな神経症状を認めなくとも不顕性の誤嚥が起こりやすく、ある種の薬物投与下では中枢機狽ェ低下し、誤嚥が誘発される場合がある。また加齢に伴い肺機狽ェ低下するだけでなく、気道粘膜や腺組織の萎縮が起こり、粘膜線毛クリアランスの低下、更には感染防御機狽ネどの気道の抵抗力の減弱がみられる。消化器においても、高齢者にしばしばみられる胃食道逆流症も誤嚥に関与すると思われる。

  胃内容物の誤嚥では直後に気管支痙攣、次いで食物残渣による気道の閉塞や胃液による化学性肺臓炎が起き、低酸素血症が生じる。気道閉塞部位より末端の肺胞が虚脱して無気肺に進展する。このような状態で咽頭細菌叢が肺内に吸引されると、細菌性肺炎を合併する。細菌性肺炎の像を呈するのは数日後であることが多い。誤嚥エピメ[ドが明確であれば、診断は容易である。

  直後の呼吸障害は、機械的閉塞による無気肺と化学的肺胞障害によるものであり、誤嚥物質の除去、低酸素血症やショックの改善が最も重要である。急性期に抗菌薬を投与しても感染の合併は防げず、起因菌の耐性化が進む恐れがあるので、注意深い観察のもとに専らドレナージに努め、感染の合併と起因菌が明らかになってから抗菌薬を投与する。気管支痙攣が強く、化学性肺臓炎を起こした場合は、ステロイドの短期投与が有用である。

  活動度の低下している老齢者の肺炎には、口腔や咽頭の分泌物や胃液を少量ずつ吸引する不顕性誤嚥が原因。その原因として脳血管障害、痴呆、食道下部括約筋不全による逆流現象などがあげられ、脳梗塞が最も頻度が高い。

  飲み込みやすくむせにくい食物の工夫や、食事時の姿勢、歯の治療、口腔内の清潔、嚥下訓練など、個々の症例に効果的な方法を根気よく試みる。

文献・多田ほか・medicina Vol.37,No.10(2000)

文責:大平 洋

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Hyogo Pharmaceutical Society 兵庫県薬剤師会

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