肝腎相関

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兵薬界 No.563,2002年12月号
2002年 12月 01日
  「肝腎かなめ」と言うが、肝と腎とは様々な面で機箔Iに補い合い、生理的状態、病的状態においても深い関係にある重要な臓器と考えられる。

  ただ、片一方は代謝で片一方は排泄を司る臓器だから、例えば体液の恒常性に重要なレニン?アンジオテンシン系においては、肝で産生されたアンジオテンシノーゲンが腎で産生されたレニンによって分解されて、アンジオテンシンになるようなことが起こっているし、ビタミンDは肝で代謝を受け、更に腎で代謝を受けることによって初めて活性型になる。

  また、肝腎症候群というのが一般的に知られている。肝硬変の時には、腎でのナトリウム排泄が低下し水が貯留しやすくなる。肝腎症候群は肝硬変の末期、あるいは劇症肝炎などの肝不全の経過中に発症する急性腎不全をいうが、形態学的に腎では虚血性の変化のみで、尿細管障害などはみられない。機箔Iな病態と考えられている。

  門脈圧亢進、あるいは末梢動脈の拡張、有効血漿量の減少などの血行動態を背景に発症する。病態的には腎皮質における細動脈のれん縮による糸球体濾過の急激な低下といわれている。実際に診断として役立つものは、急性腎不全で有名な急性尿細管壊死だが、それとは違って尿細管そのものには異常がないので、ナトリウムと水の再吸収が亢進する。従ってナトリウムの濃度は低いが、濃い(浸透圧の高い)尿が出てくるのが特徴的である。

  これはいわゆる腎前性腎不全の病態だが、これが長く続くと尿細管障害が起こってきて、逆に今度は尿中のナトリウム排泄が増えてくる。そして尿の浸透圧が低下して薄い尿が出てくる。これはかなり重症になった場合である。

  治療は非常に難しく、洛繧ヘ死亡率90%以上。一般の急性腎不全に準じてナトリウムや水、蛋白質の制限を行うが、有効な薬剤はない。肝硬変の末期の死因の一つになっている。

  よく肝腎症候群と間違うが、肝硬変に伴って糸球体病変が起こることがある。これはIgA腎症という最もよく知られたもので、慢性糸球体腎炎と同じ形態を示す。肝硬変性糸球体硬化症という言い方もするが、免疫グロブリンのIgAが糸球体に沈着することによって起こる糸球体腎炎で、これも肝硬変が進んできた時に起こってくる。

文献・木村・ドクターサロン Vol.43,No.10(1999)

文責:大平 洋

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