腎盂腎炎

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兵薬界 No.566,2003年03月号
2003年 03月 01日
  昔は腎盂炎と呼ばれていた。尿は腎臓の「腎実質」と呼ばれる部分でつくられ、その後「腎盂」に溜まる。腎盂腎炎とは、大腸菌などの腸内細菌が感染し、炎症を起こす病気である。細菌が腎盂に到達する経路として、尿道から膀胱に入り、更に尿管をさかのぼって腎臓に上がっていく経路が殆どである(上行性感染)。

  具体的には、大腸菌のうち、尿路に病気を起こす力のある病原性菌が腎臓に上がると、大腸菌が持っている「線毛」という部分が腎盂の粘膜の受容器に付き、腎盂腎炎が起こる。

  細菌の侵入経路は膀胱炎と同じであり、従って尿道が短く外尿道口が性器や肛門に近い女性に多く見られる。正常な尿路では、尿の流れが細菌を洗い流す。しかし、尿路に閉塞が生じると尿の流れが悪くなる。

  女性の腎盂腎炎の殆どは急性である。特徴的な症状は、「発熱」「腎臓部の痛み」で、発熱の場合、38℃以上、時に悪寒と戦慄と共に40℃近い高熱が出ることもある。通常、熱は午前中は比較的低く、午後から夕方にかけて高くなる。また、腎臓が腫れて大きくなるため、起こった側の脇腹から背中にかけて痛みが出る。この時、背中の肋骨の下部あたりをトントン叩くと響くような激痛がはしる。単純性膀胱炎を合併しているケースが多い。そのような場合には、「排尿痛、頻尿、残尿感」の症状も出る。

  腎盂腎炎は確定診断のため、排尿途中の尿(中間尿)を採って調べる。顕微鏡で多数の白血球が認められれば細菌を培養する。また、炎症が起きていると増加する白血球や血沈などを調べ、重症度の判定に。

  治療は、腎盂腎炎が細菌の感染による起こる疾患であるから、「抗菌薬(抗生物質やニューキノロン剤)」による治療が必要である。急性の場合は、症状が激しく出て、また高熱のため汗が多く出て脱水になりがちであるため、原則として入院して安静を保ちながら強力な抗菌薬を注射し、点滴で水分を補給する。適切な治療を行えば、熱は3?4日で平熱まで下がる。退院後も1?2週間ほど、抗菌薬を内服し続ける。

  症状や血液検査から軽症と診断された場合、通院しながら抗菌薬の内服治療も可狽ナある。その際に自宅で注意したいのが「安静」と「水分補給」である。決して無理をせず水分を摂る。水分の補給は尿の量を増やし、細菌を洗い流すことになるから大切である。

文献・門脇・NHK きょうの健康 No.137(1999)

文責:大平 洋

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