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兵薬界 No.569,2003年06月号 | |||
2003年 06月 01日 | |||
緊張型頭痛は、総患者数が2,000万人以上にのぼると推計され、最も頻度の高い頭痛にもかかわらず、診断はややもすると曖昧に行われる傾向がある。心因性傾向の強い患者は、捉えどころがない様々な訴えを繰り返し、そのため、しばしば「自律神経失調」や「更年期障害」などの安易な病名を漫然とつけられたまま放置され、最終的に病院の頭痛外来に回ってくることが多い。 頭痛の診断は、問診に始まり問診に終わるといっても過言でない。患者の背景として職業が関連し、長時間同じ姿勢で仕事、VDT作業従事者、設計などの細かな仕事、危険物取り扱い・高所作業など極度の緊張を強く強いられる仕事などに関連する。また家族関係、要介護老人を抱えているかなど、その他の外的関係、生活サイクル、几帳面、神経質な性格なども関連する。 頭痛の性状としては、通常、重い鈍痛があり、「圧迫されるような」「何かが頭に被さっているような」「引っ張られるような」「鉢巻で締め付けられるような」痛みを訴える。部位としては、後頸部・後頭部から始まり、頭部全体に及ぶ両側性が大部分である。痛みの程度は、日常生活に支障を来さない中等度以下が殆どであり、慢性型の方が反復発作型よりも痛みの程度は強い。持続時間は、反復発作型は30分から7日間持続し、慢性型では1ヶ月に15日以上、最低6ヶ月間にわたり出現する。随伴症状として、肩凝りや頂部の張りを自覚し、フワフワするような浮動感を伴うことも多い。嘔吐することはない。日内変動としては、夕方に多い。 他の機箔I頭痛と同じく、一般身体所見や神経学的所見に異常は認められない。肩・後頸筋・側頭筋に筋硬直、硬結や圧痛を認めることが多い。特に強い圧痛を訴える症例に対し、埼玉県の金先生は、同部のマッサージを施し、且つ患者にも励行させたところ、諸症状が短期間に改善した。古くは東洋医学的にもこの付近の部分は「天柱」と呼ばれ、いわゆる“頭痛・めまいのツボ”として知られている。 心理的ストレスは筋の血流減少を来たし、それが阻血性筋収縮を引き起こして頭痛を惹起する。頭痛自体も、心理的ストレスが加わると更に増幅する。このように精神心理的因子は緊張型頭痛の成因となる。更に、緊張型頭痛患者はストレスに被曝されやすく、ストレスに対する反応が過敏であり、且つ疼痛感受性の閾値が低い。 頭痛患者の精神心理学側面に関しては、例えば抑うつは一般人口の6?8%の罹患率にあるのに対し、頭痛患者では14?16%にのぼり、更に頭痛で診療所に通う患者群では罹患率40?70%にも達するとされている。また、慢性緊張型頭痛は反復発作性よりも不安や抑うつが身体症として発現しやすく、緊張型頭痛患者は健常者に比べて不安、抑うつ、抑圧された怒りなどの指標が高い。結局、緊張型頭痛患者の85%に何らかの心理的ストレスや精神心理的異常を見出す。 それでは心理的ストレスが緊張型頭痛と共存した場合、常に原因なのであろうか?そもそも慢性的な頭痛患者でストレスを感じない者がいるだろうか?精神心理的要素が要因であることは勿論だが、結果でもある。 | |||
文献・金・診断と治療 Vol.90,No.6(2002) 文責:大平 洋 | |||
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