心因性咳嗽

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兵薬界 No.573,2003年10月号
2003年 10月 01日
  器質的疾患が見つからないにもかかわらず慢性的に咳が出続ける場合に「心因性咳嗽」と診断されることがある。まず除外しなければならないのは喫煙の刺激による慢性気管支炎。治療薬物はないのでタバコを止める他ない。最近増えてきたのがACE阻害薬による咳嗽で、いくつかの統計で慢性咳嗽患者の4?5%に出ている。

  この2つが数%ずつとなると、残りの疾患はアレルギー性のもので、心因性の咳は慢性咳嗽の1%前後に過ぎないというデータがある。かなりの患者の7?8割がアトピー咳嗽、あるいは咳喘息という2つの範囲に入り、アレルギー性の咳ということになる。

  2つとも基本的には、多くの場合は乾性の咳嗽で通常の咳止めは全く効かない。いわゆるアレルギー性の気管支喘息と似ていて、夜中や起床時に悪化するケースが多い。ストレスとか心因によると診断が下されているケースが少ないない。2つとも共通しているのは、病理学には気道組織への活性化好酸球の浸潤があるのが共通の所見だが、アトピー咳嗽の方は気道の過敏性体質が存在していないので、決して喘息に移行することはなく、洛繧ヘ良好である。

  一方、咳喘息の病態は気道に好酸球組織浸潤がある他に、気道過敏症の亢進を伴っており、喘息の前段階であると理解されている。この咳喘息の40%の患者が本格的な気管支喘息に移行するといわれる。

  アトピー咳嗽は、好酸球の組織浸潤が存在するが、実際に悪さをしているのはヒスタミンと理解されているから、このタイプのアレルギー性咳嗽の治療には、新世代のH1受容体拮抗薬いわゆる抗アレルギー薬と呼ばれる中で抗ヒスタミン作用を持つものを使うことで、かなりの効果を見る。

  咳喘息は気管支拡張薬が効く咳である。本格的な気管支喘息の前段階であるので、咳喘息を見逃したくないという観点から、まず気管支拡張薬の投与による治療的診断を試みる。

  具体的には、徐放性のテオフィリン薬、あるいは長時間作用型のβ2刺激薬等を2剤併用でも結高セが、特に夜間の症状に重きを置いて就寝前に投与する。難しい検査より治療薬投与の方が手っ取り早く実践的なものになる。喘息への移行が心配だが、吸入ステロイド薬を強力に、しかも定期的に行うことで本格的な喘息に移行する確率を数分の一に抑制出来る。最初に気管支拡張薬で効果を確かめ、喘息への移行を阻止する観点から吸入ステロイド療法を併用する。

文献・永田・ドクターサロン Vol.45,No.6(2001)

文責:大平 洋

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