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兵薬界 No.578,2004年03月号 | |||
2004年 03月 01日 | |||
分岐鎖アミノ酸 (BCAA) は、その分子国「中に文字通り炭化水素鎖の枝分かれ国「を持つ必須アミノ酸であり、バリン、ロイシン、イソロイシンをさす。筋肉などの体構成成分である他、その働きとして蛋白合成作用、筋蛋白の崩壊抑制作用、免疫能の促進作用などが指摘されている。 肝硬変患者は病態が進行すると、肝臓における体内中毒物質の代謝能の低下により肝性脳症をきたす。 その原因として、アンモニアやメルカプタン、短鎖脂肪酸などが示唆されている。 Fischer らは肝硬変患者において血漿中 BCAA の低下と芳香族アミノ酸 (AAA ; チロシン、フェニルアラニン、遊離トリプトファン) の上昇を認め、更に BCAA の AAA に対する比 (Fischer比) の減少が脳症と関連のあることを見出し、患者に BCAA を投与することによる脳症の改善を報告した。我が国でも BCAA 輸液製剤 (アミノレバン、モリヘパミン) が慢性肝障害時の脳症改善薬として用いられている。 肝硬変において、なぜ BCAA が減少するのかについては不明であるが、これまでのところ以下のことなどが絡み合い、体内 BCAA の減少に繋がるという。 1.筋肉においてアンモニア代謝の際、BCAA が用いられるが、過剰のアンモニア処理のために BCAA の消費が進み枯渇する。 2.肝硬変に伴う高インスリン血症による筋肉内への BCAA の取り込みの促進。 3.BCAA のエネルギー基質としての利用亢進。 肝硬変患者は蛋白とエネルギーの不足する低栄養状態 (PEM) にある。PEM の存在は予後に影響を及ぼすため対策が必要となる。血清アルブミンは肝で合成され、内臓蛋白量のよい指標であることにより、血清アルブミン測定により蛋白低栄養状態を把握することが出来る。更に血清アルブミンの低い肝硬変患者は生命予後が悪いことが知られている。 肝硬変患者において BCAA が不足し、Fischer比と血清アルブミンとの間に相関があることが知られ、 BCAA の補充により血清アルブミンの増加が認められることが明らかとなった。更に血清アルブミンの上昇が患者の予後や QOL の改善に繋がる。 | |||
文献・三輪・臨床栄養 Vol.100,No.2(2002) 文責:大平 洋 | |||
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