アミノ酸

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兵薬界 No.578,2004年03月号
2004年 03月 01日
 蛋白質を構成しているアミノ酸は、すべて α?アミノ酸であり、一つ以上のカルボキシル基とアミノ基を有しており、両性電解質である。グリシン以外のアミノ酸は、少なくとも一つの不斉炭素原子を持つので、光学的に活性であるが、生体内のアミノ酸は殆どL型である。


 Rose らは窒素出納法により成人のアミノ酸必要量を決定した。その研究から、アミノ酸を必須アミノ酸と非必須アミノ酸の二つに分類した。


 必須アミノ酸のうち、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファンは、それらのケト酸までも必須である。リジン、スレオニン及びヒスチジンはアミノ基転移を受けないので、そのものが必須である。ストレス状態や病気の時には、非必須アミノ酸も不足することがあり、条件的必須アミノ酸とみなされる。


 以上のことから、アミノ酸を必須と非必須の二つに分類することに無理があり、非必須アミノ酸は体内で生成するが、最初から食事中あるいは輸液中に含まれている方が好ましいことから、近年、非必須アミノ酸は可欠アミノ酸と呼ばれる。従って、必須アミノ酸は不可欠アミノ酸という。実際、窒素源として必須アミノ酸のみの飼料で飼育するとラットは正常に成長しない。


 アミノ酸は不可欠、可欠を問わず、蛋白質合成の材料やエネルギー源となる他、多様な働きをしている。不可欠、可欠という分類は主に体蛋白質蓄積に基づいている。しかし、各アミノ酸はその代謝の相違から、それぞれ特有の機能を発揮しており、代謝的には蛋白質を構成しているアミノ酸はすべて不可欠アミノ酸であるといえる。


 また、いくつかのアミノ酸は神経活動に関与している。即ち、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸はそれ自身が興奮性の神経伝達物質である。また、トリプトファンのセロトニンの、チロシンはカテコールアミンやメラニンのそれぞれ前駆体である。ヒスチジンとグルタミン酸の脱炭酸によりヒスタミンと GABA がそれぞれ生じる。網膜に多く含まれるタウリンはシステインからつくられる。アルギニンを前駆体とする一酸化窒素 (NO) は内因性血管拡張物質であるが、神経伝達物質としても働き、更にマクロファージで生成した NO は微生物や腫瘍細胞に対して細胞毒として作用する。

文献・岸・臨床栄養 Vol.100,No.2(2002)
文責:大平 洋

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Hyogo Pharmaceutical Society 兵庫県薬剤師会

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