高安動脈炎

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兵薬界 No.579,2004年04月号
2004年 04月 01日
 1905年、高安 (金沢大眼科) が眼底乳頭周囲血管の花冠状動脈吻合を示した女性例を日本眼科学会に報告したことに始まった。そして同様の眼底所見を有する例において、橈骨動脈が触れない例が知られるようになり、本疾患は高安動脈炎、あるいは脈なし病と呼ばれるようになった。


 1960年代、本疾患は大動脈弓とその主要分枝、そしてしばしば肺動脈に生ずる非特異的動脈炎であると報告され、本疾患を大動脈炎症候群と呼ぶことが一般的となったが、外国においては高安動脈炎と呼ばれることの方が多い。


 本症は16?25歳の女性に圧倒的に多く、炎症に起因する全身症状を伴い、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、夜間発汗、発熱、食欲不振、体重減少などを生じる。これらの症状は血管症状の出現する数ヶ月以上前からみられることも多く、若年女性の不明熱の鑑別診断に本症を入れる必要がある。


 鎖骨下動脈の狭窄は同側上肢の血圧低下を生じさせる。脈なしとなるのは、実際は10?30%である。


 腸骨動脈の狭窄による同側下肢の血圧低下が生じる。一般に健常例においては、血圧の左右差は上肢下肢ともに10mmHg以内であり、また下肢の血圧は上肢より10mmHgほど高いことを知れば、血圧の左右差、上下肢差により動脈の狭窄の有無を知ることが出来る。本疾患患者において血圧の左右差は46%にみられる。


 総頸動脈の狭窄は視覚障害や失神、一過性脳虚血発作、脳梗塞をきたす。


 典型的な高安眼底は2?3%にしかみられない。


 腹部大動脈やその分枝の狭窄により腹痛や嘔気が生じ、また腎動脈の狭窄により高血圧や腎機能不全が生じる。


 若年女性の大中血管の狭窄・拡張症状や高血圧、四肢の脈・血圧差、血管雑音に注目し本症を疑う。血液検査には特有の所見はないが、CRPの上昇に注目する。特異的な検査所見がなく、発熱や全身倦怠が主症状となり得るので、不明熱として扱われることがある。MRI およびCTは血管の狭窄病変の抽出のみらならず、炎症による血管壁の肥厚も抽出可狽ナ、治療による改善の有無も判定可狽ナある。


 60%の症例は、ステロイド治療に反応し、症状と血管炎の消退をみる。

文献・濱邊・medicina Vol.39,No.9(2002)
文責:大平 洋

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Hyogo Pharmaceutical Society 兵庫県薬剤師会

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