慢性膵炎

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兵薬界 No.584,2004年09月号
2004年 09月 01日
 膵臓は胃の後側にあり、背骨との間に挟まれ、重さ 60?100g、長さ 15cm くらいの塊である。この肉の中には、食物を消化する酵素をつくる腺房細胞という 「膵外分泌腺」 と、糖が吸収されると血糖を種々の臓器に取り込ませるのに必要なインスリンをつくる 「内分泌腺」 とがある。


 膵臓に炎症が起こることを 「膵炎」 といい、急性と慢性がある。前者は主に可逆的で、後者は一般に進行性である。


 膵臓に炎症が生じると膵臓自身に含まれている酵素によって膵臓は溶け破壊されるため、腺房細胞はなくなる。この時にひどい腹痛や背部痛が生じる。そして、なくなった腺房細胞を補うために、線維が硬くなる。これを慢性膵炎という。肝臓でいえば、肝硬変のようなものである。


 この原因には、アルコールの摂り過ぎ、高脂肪食、胆石症などが挙げられ、脂っこいものや飲酒を続けていると、時々腹痛や背中の痛みを繰り返し、徐々に膵臓の細胞は壊れていく。このような痛みを伴う膵臓痛がある時は、慢性膵炎の 「代償期」 といい、消化機狽烽まり悪くなく、糖尿病にもあまりならない。


 一方、このような変化が更に進んでくると、膵臓痛はなくなり、病気は治ったかのように見えるが、実はその逆で、痛みがなくなるほど機狽ェ悪くなったことを意味し、この時期を 「非代償期」 の慢性膵炎という。非代償期では、消化酵素がつくられなくなるため、食事は分解・吸収されず、便に排出される。脂肪吸収は低下し、脂肪便になる。また 「膵ランゲルハンス島」 が線維で壊され、インスリンが出なくなり、「膵性糖尿病」 と名付けられる糖尿病になる。


 代償期の食事は、従来の脂肪制限食が妥当で、1日30g、1回10g を超えないものとする。一方、膵臓痛がなくなった非代償期膵炎にこの食事療法を続けると、体重減少、栄養指標は悪化し、貧血を招いたりする。また、大切な脂溶性ビタミンA、D、K が欠乏することになる。


 そこで、食事中脂肪は制限せず、1日に 40?70g くらい摂ってもいいが、脂肪消化吸収不良があるので、市販されている膵酵素製剤を食事ごとに常用量の 3?10倍くらい服用する。


 代償期・非代償期とも禁酒。

文献・中村・毎日ライフ 2003年7月号
文責 : 大平 洋

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Hyogo Pharmaceutical Society 兵庫県薬剤師会

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